月刊たかしまや通信バックナンバー:平成26年11月号

賃貸住宅を取り巻く不動産市場の直近の動向

賃貸経営への強い投資意欲、堅調な新築着工

市場の平均賃料指数も一部で上昇傾向を見せる
国際情勢や気象状況なども反映して、景気の行方に力強さがかげり始めていますが、不動産市場は強気と弱気が相まっているようです。相続税増税を控え、平均賃料の一部に回復基調が出てきた賃貸住宅を取り巻く市場の直近の動向を見ていきます。

株式市場はもとより多くの金融市場は、様々な事象を受け時々刻々と変化します。突発的な事件が発生して市場が大きく左右されることも珍しくありません。ひるがえって不動産市場の場合、金融市場全体の中で見れば比較的実需を基に市場が動いているようです。

それでは賃貸住宅をベースに不動産市場の最近の主だった動きを見ていきます。

まず直近の景気動向ですが、帝国データバンク(TDB)が10月初めに公表した「景気動向指数」によると、「9月の景気DIは、2ヵ月連続で悪化。国内景気は下押し圧力が続いており、政府の景気対策に依存する傾向が強まる懸念もある」と、警戒感を強めています。4月の消費税増税の反動が意外に大きく影響し、一般消費や住宅販売などのブレーキ要因となって、景気を冷やす結果となっているようです。

ただ、市中の景況感が低下する一方で、不動産市場の活況化が見られます。この背景にあるのは住宅・オフィス・物流などの賃貸市場と売買の投資マーケットの底堅い好調です。不安材料も少なくないのですが、今のところ投資環境の力強さが目立っています。好調の反面、東京オリンピック開催の影響など、人手不足から来るコスト上昇による価格アップが懸念材料として残っています。

本題の賃貸住宅市場の現況ですが、大きな流れとしては、ここ数年の動きと大差ないのが実態のようです。

国土交通省が毎月公表している「不動産市場動向マンスリーレポート」によると、首都圏、近畿圏ともに1R、DK、FAタイプの賃料指数がこの5月以降、前月同値から7月に入って前月比増を見せ、7~10月の4ヵ月は各々上昇しています。この公表数値はリクルートのデータを使っているので、市中相場をかなり正確に反映していると思われます。

重要性を増す仲介・管理策
そして、新築着工件数の動向からやはり目が離せません。6月実績までは16ヶ月続けて前年比増となっていたのが、さすがに7、8月には調整局面から減少となりました。

入居者には新築の人気が高い分、新築が増えると競争が激しくなり、賃料の頭打ちや値下げ、空室増加に影響するのですが、相続税対策や賃貸経営への投資意欲が強い分、新築の増加は今後も堅調に続くと見ておくべきではないでしょうか。それだけ既存物件に力をつけ、入居率の向上を図る仲介・管理策が従来にも増して求められています。

賃貸マーケット情報

シェアハウスの多様な変化

企画・コンセプトを前面に打ち出す 入居者はプラスアルファの価値を期待
シェアハウスが多様な変化を見せ、従来の共同住宅にない特徴を持った個性的なシェアハウスが次々と登場しています。

シェアハウスは、プライベートなスペースを持ちつつも、他人とトイレ、シャワールーム等の空間を共有しながら生活する賃貸物件で、入居者一人ひとりが運営事業者あるいはベッド単位で契約を結びます。トイレ、シャワー、ルーム等の共有の空間は、運営事業者が定期的に掃除するなどの管理を行うのが原則となっています。

最近では、かつてないイメージのシェアハウスが生まれていますが、賃貸住宅の三大要点ともいえる家賃の安さ・好立地・充実の設備以上に、「企画性」や「コンセプト」が全面に打ち出されているのが特徴です。

家賃の負担を軽減するのが大きな目的に加え、シェアだけではなく、生きがいや趣味の探求をより強く求める。社会(仲間)との協調を図るなど、プラスアルファを期待して移住する傾向が強くなっているのが窺えます。

他にない特色を試行錯誤
旧社宅・社員寮などの既存建物の活用を図り、企画・コンセプトを大事にしているだけに、一度契約が決まると比較的長い居住期間を維持しているようです。

単なる低価格志向ではなく、ヨガスタジオ付き、英語のみで会話するルール、健康に痩せる、企業化育成、子育て支援・・・などを謳うシェアハウスが各地でオープンしています。そして看護・介護スタッフが常駐した日本初の「シェアハウス型ホスピス」まで開設されました。とにかく他にない特色を出すための工夫、試行錯誤をしているのが大きな特徴です。

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