月刊たかしまや通信バックナンバー:平成27年5月号

最新の賃貸入居者像を「住宅市場動向調査」結果から読む

物件に関する情報収集は「不動産業者」が最も多い

「住宅の選択理由」は5年間全く同じ傾向見せる
 住宅白書ともいえる「平成26年度住宅市場動向調査」結果が国土交通省から公表されました。住宅の選択理由、世帯主の年齢、家賃の傾向など、賃貸住宅入居者の平均像が読み取れます。結果に大きな変化は見られず、一定した落ち着きを見せています。

 平成13年度より首都圏、近畿圏、中部圏を中心に注文住宅、分譲住宅、中古住宅、賃貸住宅などを対象にして、全国規模で実施されている住宅調査です。今後の住宅政策の企画立案における基礎資料としているだけに、調査員が対面で調査票を記入するなど、信頼性の高い内容となっています。

 賃貸住宅に関連する事項を見ていきます。

 まず、「住宅の選択理由」についてのベスト5は、「家賃が適切だった」が最も多く、次いで「住宅の立地環境が良かった」「住宅のデザイン・広さ・設備等がよかった」「昔から住んでいる地域だった」「信頼できる不動産業者だった」と続きます。この結果は過去5年間全く同じ。

 賃貸住宅を選ぶ要因は、①家賃②立地・環境③部屋の広さ・設備に尽きることがよく分かります。その上で、取り扱う不動産会社の的確なアドバイス等で契約されているのが調査により証明され、手応えを感じます。

 次に、住宅の選択理由となった設備としては、「間取り・部屋数が適当」「住宅の広さが十分」「住宅のデザインが気に入った」「台所の設備・広さが十分」「浴室の設備・広さが十分」の5項目がベスト5で、この5項目も過去5年間、同じ内容です。

 やはり設備関連の基本は、間取り・部屋数・広さ・デザイン・台所設備・浴室設備に集約されているようです。

 続いて物件に関する情報収集方法ですが、賃貸住宅入居世帯の物件情報収集方法は、「不動産業者」が約52%と最も多く、次いで「インターネット」「知人の紹介」となっています。この傾向も過去5年間変わらず、基本的に賃貸物件を探す窓口は不動産会社というのが定着しているようです。

新築~築30年が市場の約8割
 契約の業務や物件内容、街の情報等に最も詳しいのが物件を取り扱う不動産会社ですから、お部屋をお探しの消費者の皆様もそうした事情を熟知していることから、こうした結果となっているのがよく分かります。

 また、賃貸住宅の建築時期は「平成17年以降」が35%と最も多く、「平成7年~16年」が約21%、「昭和60年~平成6年」が約21%となっています。平均築年数は約16年。ということは新築~築30年が市場の約8割を占めているということです。

 なお、賃貸住宅入居世帯の通勤時間は片道平均約34分で、入居世帯の世帯主は30歳未満が約33%と最も多く、次いで30歳代が約29%で、平均年齢は約38歳となっています。

賃貸マーケット情報

「DIY型賃貸借の活用」

個人住宅の賃貸流通促進化の動き加速 市場に物件が増え、競争がさらに増す
 時代とともに賃貸経営のスタイルも様々な変化を見せています。社会事情や経済状況、生活様式が時代の波によって変わることで賃貸住宅とその経営環境も変化しているものです。

 例えば、国土交通省が提唱する「DIY型賃貸借の活用」など、数年前には見られなかった発想です。個人所有のストックされた空き家を市場に流通させる目的で、新しい賃貸借のやり方として、借主の意向を反映した改修を行うDIY型賃貸借を積極的にPRしています。

 同省ではDIY型賃貸借契約を活用する為の資金調達の方法や協議、合意すべき事項について取りまとめ、平成25年度には、貸主が修繕を行わず借主が自費で修繕やDIYを行う借主負担型の賃貸借契約に係わる「個人住宅の賃貸流通を促進するための指針(ガイドライン)」を公表しました。また、空き家を活用するための知恵袋と題した『個人住宅の賃貸活用ガイドブック』を発行。貸主、借主、行政・宅建業者の立場から実に分かりやすくDIY型賃貸借の活用方法が説明されています。

急速な時代の変化に備える
 ただ、賃貸経営の立場から考えると、手付かずにストックされている個人住宅が設備されて賃貸市場に流通すると、市場の物件が増えるわけですから、競争が増すことにつながり、オーナー様としては決して安穏としていられないものがあります。といっても時代の変化も急速ですから、「DIY型賃貸借」の実態を捉えておくために。こうした情報のチェックも必要ではないかと思う次第です。

 ※『個人住宅の賃貸活用ガイドブック』は国土交通省のホームページからダウンロードできます。

ニュースフラッシュ

賃貸住宅の新築着工にブレーキ 昨年7月以来8ヶ月連続の減少

 賃貸住宅の新築傾向にブレーキがかかっています。国土呼応通称が発表した2月の貸家の新築着工は、前年同月比7.5%減の2万5,672戸。これは前年比で昨年7月以来、8ヶ月連続の減少となっています。今年1~2月の合計でも前年比9.0%の減少で、平成26年4月~27年2月の11ヶ月分の合計でも、前年同期の3.8%減少です。1年前の平成25年度が、過去5年で最も多い新設着工であった反動が現れたものと見られます。

 ただ市場では、2月の減少幅から底打ち感が見られるとされ、節税に関連した投資や今後の消費税増税の動向を見据えて、賃貸住宅新築の需要は底堅いと捉えています。

 つまり、今年1月からスタートした相続税の基礎控除引き下げに対する対応策等で賃貸経営に対する期待感が根強いことから、この先、賃貸住宅新設の回復基調が増すと見られます。とくに景気回復のスピードが速まれば、さらなる雇用促進や賃金のベースアップに支えられて、賃貸住宅の新設が増える可能性が小さくないと予測されます。

「平成25年住生活総合調査」速報集計結果

「借家」に対する評価の満足は約64%

 住宅及び居住環境の評価のほか、最近5年間の居住状況の変化を調べた「平成25年住生活総合調査」の速報集計結果が国土交通省から発表されました。調査対象世帯数は8万5302世帯で、回収率は89.2%。全国の賃貸住宅に対して満足、不満足率で評価されています。

 この5年間の住宅を取り囲む環境と住居に対する評価がどのように変化したかを調査したもので、持ち家と借家別にまとめられています。借家はメインの賃貸住宅のほか、UR、公社、社宅などが含まれています。

 まず、借家の「住宅に対する評価」ですが、まあ満足と満足の合計は約64%で、対する非常に不満と多少不満の不満率は約35%。20年前の平成5年は満足が約40%、不満足率が約60%ですから、20年間に住宅の品質が向上したことを物語っています。

 さらに昭和63年時と比べても、年を経るに従い年々不満足率は減少しています。

 「居住環境に対する評価」では、満足が約71%、不満率が約28%で、満足の割合がかなり高く、5年毎の調査のたびに満足度が高まっています。そして、「住宅・居住環境の総合的な評価」は、満足が約74%、不満率が約25%。平成5年が満足約58%、不満率約41%ですから、やはり20年で不満要素が半分近くまで減少しています。こうした調査結果を見ると、今日、入居者から賃貸住宅が高く評価されているのが分かります。

借家等への住み替え意向約34%
 また、家賃に対して次のような捉え方がされています。平成25年の借家における家賃負担に対する評価では、「ぜいたくはできないが、何とかやっていける」が約49%と最も多く、次いで「ぜいたくを多少我慢している」が約22%、「家計にあまり影響がない」が約19%、「生活必需品を切り詰めるほど苦しい」が約10%となってます。

 今後の住み替えについて、借家の世帯は、持ち家の住み替え意向が約42%、借家などへの住み替え意向は約34%、こだわらないが約23%となっています。

 ところで、現住居以外に所有・賃借している住宅がある世帯の割合は、全体で平成20年の約7%から9%に増加しており、相続で所有する世帯が約3%から約4%、相続以外で所有している世帯は約3%から約5%とそれぞれ増加しています。

賃貸経営ワンポイントアドバイス

かゆいところに手が届くサービスの充実で「顧客満足」を高めて経営の安定につなげる

入居稼働率の向上を図る
 賃貸経営はつまるとこ「入居者満足」にいかに応えるかにかかっていいるのではないでしょうか。

 マーケティング用語で、消費者の要望に応える「顧客満足」がビジネスの成否を分けるといわれています。顧客に対するサービスを充実させ、厳しい競争に打ち勝つという意味ですが、賃貸経営も全く同様で、顧客となる入居者にサービス、商品内容(賃貸住宅)の充実を図って、満足度を高める手法が経営の安定に繋がるというものです。

 入居者満足を獲得した成果は「長期入居の実現」、つまり入居稼働率の向上に表れます。長期に入居してもらうためのあらゆる工夫や入居者本位のサービスが、入居者満足を高めることに直結すると思われます。

 入居者に物件が選ばれる要素の一つの家賃は地域の相場があるので逸脱することはできず、二つ目の立地も固定されたもので、三つ目の部屋の広さも間取りも決まったものです。あと、工夫するとすれば何があるかといえば、サービスの徹底ではないでしょうか。中でも困った出来事、苦情等のヒューマン・トラブルへの対応姿勢が物件の評価を決定します。

 とにかく、楽しく快適に暮らすための阻害要因を徹底的に排除することです。その上に掃除が行き届き、植栽や花が豊か、敷地・建物全体の景観が整備されていますと、より満足度は高まるはずです。

 サービスが充実していて、生活の困ったクレーム処理にすばやく対処してくれれば、何もよそへ引っ越す理由がないわけです。結局、かゆいところに手が届くサービスと徹底して、入居者本位の入居者満足度の向上が賃貸経営の安定に繋がるのです。

 オーナー様ご自身が入居者に接して様々なサービスを提供するのは色々制約が出てきます。顧客対応の管理をおまかせいただきますと、入居者の満足をいただきながら、オーナー様のご期待にも応えることができるものと考えております。

情報パック

平成26年度住宅経済関連データ

昭和33年以降の「家賃の動向」は、ここ10年間全国、関東、近畿ともにわずかながら下落
 わが国の住宅市場を取り巻く現状の姿を理解するために、このほど国土交通省から「平成26年度住宅経済関連データ」が公表されました。住宅整備の現状や住宅建設の動向等をテーマに、表・グラフを多用した電子データとして公表しているもので、日本の住宅の現況を理解するのに役立つ内容です。

 賃貸経営に関係するものとして、昭和33年以降の「家賃の動向」が掲載されています。早速データから家賃の経緯等を見ていきます。

 今から32年前、昭和58年の木造賃貸住宅1畳当たりの全国の家賃(月)は1,889円、非木造が2,974円。当時の消費者物価指数(総合)は昭和60年を100として95.8%これを平成25年で見ると、木造が2,611円、非木造が3,821円で、この年の消費者物価指数が113.1となっています。

首都圏の家賃レベルは特別
 ちなみに平成5年の消費者物価指数が113.8ですから、ここ20年間ほぼ変化なしといったところです。前記の家賃は全国平均ですから、関東、近畿ではかなり違い、関東大都市圏の昭和58年の木造は2,986円、非木造は4,224円で、平成25年では木造3,839円、非木造5,001円。やはり首都圏の家賃レベルは特別といったところです。

 直近の10年間で見ると、平成15年の全国の木造は2,725円で、非木造は3,960円。関東大都市圏が木造4,235円、非木造5,208円。近畿大都市圏が木造2,612円、非木造4,048円。これを10年後の25年と比べると、全国、関東、近畿ともにわずかですが下落しています。

 本紙でも家賃の傾向をここ数年来、横ばい、やや弱気気味と取り上げていますが、今回発表されたデータもよりますと、ここ10年で3~5%程度下落しているのが分かります。